お知らせ
門出
3月か…
二十数年前のこの時期、私は遥か南の孤島からこの黄金郷と呼ばれるジパングへと旅立ったんだ。
その日は南の島らしく暖かい風に包まれ、旅立ちにふさわしい澄みわたるような青空が広がっていた。
私は安物スーツに身を包み、友人の運転で空港へと向かったんだ。
ここまでは順調だった。
「そういえばさ…」
お互いカーラジオに耳を傾け、会話の無かった車内で友人が口火を切った。
「以前紹介した女子いたじゃん?彼女が最後に一目会いたいって言ってて、◯◯公園で待ってるんだよね」
遡ること数週間前。
車を運転する友人に女子を紹介されたんだ。
友人と同じ他校の女子生徒で運動部に属する彼女は、浅黒で目がクリっとしてて活発で可愛らしい年下の女の子だった。
お互い好印象だったがジパングへと旅立つ私とは違い、彼女はまだ在校生。
当時まだチェリーボーイの私にとって遠距離恋愛とは拷問であり、まさに蛇の生殺しと判断し、彼女との距離を縮めることなくこの日に至っていた。
それより何より、会いたいと言われても時間に余裕がある訳ではない。
現在の携帯普及率とは違い、当時の学生で携帯を持っているのはセレブの末裔か、バイオレンスの世界で名を馳せるアウトローの一部しかいなかった。
多分に漏れず、彼女も持って無かった。
断る術もないので彼女の待つ公園に寄り道をし、これまでの事、これからの事を彼女と話し、最後に「さよなら」と伝えた。
彼女の頬を伝う涙が春風に乗って小さく弾けた。
それは二人に春の訪れを伝える風ではなく、決して叶うことのない小さな恋の終わりを告げる風だった。
そして再び空港へと向うも途中で渋滞に巻き込まれてしまい、いよいよヤバいレベルでの空港到着になってしまった。
急ぎ足で出発ロビーへ向かっていると、空港関係者に頭下げてる私の両親が見えた。
なぜ頭を下げてるのかはだいたい検討がついたが、私にはかまってる余裕がない。
そのすぐそばにはサプライズで来てくれた友人達やバイト先の先輩と同僚も見えた。
見送りに来て頂いて誠に恐縮ではございますが、皆に挨拶している暇など私にはない。
その皆を横目に足早に通り過ぎようとしたら私の両親が気付きまして、開口一番「バカヤローっ!飛行機待ってるだろがっ!早く行けっ!」
それに気づいた友人達は
「え!?いたの!?もう行くの?待ってたのに…」
それを皮切りに、
「二度と帰ってくんなっ」
「ボケーっ」
「アタシとはただの遊びだったの~っ」
罵詈雑言を一身に浴びながら搭乗ゲートへ駆け込みジパングへと旅立った。
あれから二十数年。
この時期になると思い出す。
あの最高の門出を。
ウエマ
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