タイミング｜東京・千葉・福岡でシステム天井工事、店舗・オフィス内装はSEED

マウスが壊れた。



その壊れたタイミングが悪かった。



私は時折そんなタイミングの悪さを発揮する。


「これ見られたら怒られるだろうな」って時はだいたい見られて怒られるし、

ポイント失効を翌日に控えた買い物では買った直後にポイント失効するし。




時は少年少女が青春を謳歌する際の選択肢に、部活に励むか盗んだバイクで走り出すかが多くを占めてた時代の話だ。


そんな時代にマイノリティな青春の過ごし方として、”ヲタク”がいた。


今でこそグローバルな活躍を見せ、老若男女問わず幅広く支持されているヲタク文化だが、その当時は「気持ち悪い」「怖い」「環境破壊」の３Kを担っており、どちらかと言えば迫害に近い扱いを受けていた。


「一生２次元の女性しか愛しません」と悪魔の契約を交わしたヲタクのみが語る事を許され、
それ以外の多くのヲタク達は息をひそめながらアニメ鑑賞に勤しみ、アイドル声優の諜報活動に奔走し、TVゲームに興じた。


この当時の私はそういったヲタク文化にハマる事もなく、爽やかイケメンとして青春を謳歌してたのだが、その後それを一変させる出来事が起きる。



とある日、
「小学生の頃から年齢確認される事なくエロ本を買ってる」と武勇伝を語る老け顔の友人家に遊びに行った時のこと。


なにやらニヤニヤとゲームをする友人。


画面には２次元の女学生が映っている。


これこそ私の青春を一変させたゲーム『ときめきメモリアル』との出会いだった。


『ときめきメモリアル』通称”ときメモ”とは、学園生活を送る中で複数の女性をコロがしつつ、自分好みの女子生徒と密かに愛を育み、最後は好みの女子から告白させるという男らしさを微塵も感じない恋愛シュミレーションゲームの礎を築いた伝説のゲームだ。


自宅に戻った私の手には何故かときメモが握られており、訳もわからないままパッケージを開けてみた。


これがパンドラの箱とは知らずに…


それを何かに取り憑かれたかのようにホコリまみれのゲーム機に突っ込んだ。


この時を境に彩り豊かな２次元世界に没頭し、それと同時に現実から色が抜けていった。


早い話し、どハマりしてしまったのだ。


学校やバイト先では爽やかイケメンを演じつつ、自宅ではときメモに没頭するという隠れキリシタンの様な生活を送る事数日。


ときメモも終盤にさしかかったとある日の事だ。


その日は先輩と一緒に合コンに行く約束をしていたのだが、「今夜こそキメる！」と気合いの矛先を合コンではなく、ときメモに向けゲーム機の電源を入れた。


遂にエンディングを迎え、見事意中の女子生徒から告白をされた。


瞳から熱いものがこぼれそうになるのを堪えてたら、画面越しの彼女が先に泣いた。

ここで私の涙腺も崩壊した。


「ありがとう」

嗚咽しながらそう呟いた時、ガチャりと部屋のドアが空いた。


「お前、遅いよっ！何してるんだっ！？」


振り返った先には合コン行くために迎えにきた先輩がいた。


TVに映し出されている２次元の女子学生。
それを見て「あぁぁぁ…」と、奇声を発する先輩。
嗚咽する私。


地獄絵図が広がった。


「言わないで」と懇願するも、その後の合コンではしっかりチクられ、女子達ドン引きの中魔女裁判が如く吊し上げられ、最後に断罪された。



時は戻って現在。


マウスが壊れた。



たまたま見つけた欲しかった商品のタイムセール。
購入確定ボタンをクリックする直前にカーソルが動かなくなった。


私は時折そんなタイミングの悪さを発揮する。




ウエマ