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防煙垂壁とは?建築基準法で規定される構造や高さについて学ぶ
みなさんは「防煙垂壁」をご存じでしょうか?防煙垂壁とは、建物の排煙設備として設置しなければならない垂壁のことをいいます。「防煙垂壁の構造はどうなっているの?」「どんな場合に防煙垂壁が必要になるのか?」など、防煙垂壁に関する疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
そこで、この記事では防煙垂壁の構造や高さなどについて、分かりやすく解説します。この記事を読んでいただけると、防煙垂壁の基礎知識を得ることができるでしょう。
目次
防煙垂壁とは
「防煙垂壁(ぼうえんたれかべ)」とは、建物内部で生じた煙の移動を防ぐための垂れ壁のことをいいます。建築基準法上では「防煙壁」と呼ばれており、煙を一定の面積ごとに区画するのが特徴です。排煙設備が必要な建物における、500㎡以内ごとの防煙区画が、防煙垂壁の設置位置になります。火災の際に発生する、一酸化炭素や有毒ガスなどを含む煙が、廊下や上層階に移動するのを一時的に防ぎ、避難するのに必要な時間を確保します。
防煙垂壁の構造
建築基準法では、防煙垂壁の構造は以下の条件を満たすことが求められます。
「不燃材料で作られていること」
「不燃材料で覆われていること」
上記の条件を満たす素材として、多く採用されているのが「ガラス」です。ガラスは、建築基準法の告示1,400号によって、「不燃材料」の一つとして定められています。同告示が定める不燃材料は、以下の17種類です。
- コンクリート
- れんが
- 瓦
- 陶磁器質タイル
- 繊維強化セメント板
- 厚さが三ミリメートル以上のガラス繊維混入セメント板
- 厚さが五ミリメートル以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板
- 鉄鋼
- アルミニウム
- 金属板
- ガラス
- モルタル
- しっくい
- 石
- 厚さが十二ミリメートル以上のせっこうボード(ボード用原紙の厚さが〇・六ミリメートル以下のものに限る。)
- ロックウール
- グラスウール板
引用元(不燃材料を定める件)
防煙垂壁の高さについて
建築基準法によって規定される「防煙垂壁(防煙壁)」と認められるには、原則として500ミリメートルの高さが必要になります。ただし、次のいずれかの構造を持つ不燃性の戸(不燃戸)の上部の垂壁は、高さが300ミリメートルあれば、防煙垂壁として認められます。
「常時閉鎖式の防火戸」
「煙感知器と連動して閉鎖する戸」
ガラスの防煙垂壁の注意点
すでにご紹介したように、防煙垂壁に採用されている素材の一つが「ガラス」です。ガラス製の防煙垂壁はデザイン性に優れているのが特長で、多くの建物で使用されています。しかし、メリットばかりではありません。ガラス製の防煙垂壁は、地下街や商業施設など、不特定多数の人が集まる場所に設置されていることが多いです。火災時に煙の移動を防止するという目的から、人々の頭上の位置に設置されるため、万が一ガラスが破損して落下した場合には、大きな事故につながる恐れがあります。こうした事故を防ぐには、以下の点に注意してください。
- 垂壁の高さや割付け幅には制限があるため、設計する際には製造会社のカタログや資料を参照する。
- ガラス製防煙垂壁を取り付ける下地の構造が、地震が起きた際にもガラスの重量に耐えられることを確認する。
- 大きな地震の際にはガラスが破損する可能性があるため、万が一破損してもガラスが落下しないように、支持金具に結び付けた下部フレームを通して、フレームとガラスを接着する。
- 垂壁のガラスと柱や壁の取合い部は、地震の衝撃によるズレを吸収する構造にする。
- スキー板など棒状の長い物を持つ人が通る可能性がある場合は、ガラスにぶつけないように注意喚起する。
可動式の防煙垂壁の設計方法
デザイン的に気になる場合は、可動式の防煙垂壁を採用する方法もあります。可動式のものであれば、防煙垂壁を見えなくすることが可能です。可動式の防煙垂壁は、火災発生時に煙の感知器に連動して降りてくる仕組みです。
可動式の防煙垂壁を設計するには、次の設置基準を満たす必要があります。
- 火災時に有効に作動すること
- 垂壁の高さは50センチメートル以上とし、作動後には床面から1.8メートル以上の空間を確保すること
- 煙感知器に連動して作動すること
- 垂壁の近くに手動降下装置を設けること
- 中央管理室(防災センター)の設置が必要な建物の場合は、中央管理室で垂壁の作動のコントロールができ、かつ監視できること
まとめ
以上、防煙垂壁について解説いたしました。防煙垂壁は、普段は意識される機会は少ないですが「火災時の煙の拡大を防ぎ、人命を守る」という非常に重要な役割を持っていることがお分かりいただけたかと思います。いざという場合に大切な人命を守れるように、法律が定める基準をきちんと満たした防煙垂壁を設置することが大切です。
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